Dino Gavina Part 1
PART 1

Introduction

現代の我々の暮らしにまで届く、
ディノ・ガヴィーナの情熱と凄まじい直感力

 BUNDLESTUDIOは2023年12月22日(金)~28日(木)、2024年1月5日(金)~21日(日)まで、BUNDLE GALLERYにて『ディノ・ガヴィーナ 破壊と創造のデザイン史』展を開催いたします。
ディノ・ガヴィーナは、1950年に<ディノaガヴィーナ>を立ち上げ家具の販売を開始し、1960年に家具メーカー〈ガヴィーナ(のちにシモン)〉を設立した人物です。高濱和秀、アキッレ・カスティリオーニ、ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ、イニャツィオ・ガルデッラ、カルロ・スカルパ、マルセル・ブロイヤーらの家具を世に送り出す一方、1962年には〈カッシーナ〉を設立したチェーザレ・カッシーナとともに照明メーカー〈フロス〉を設立しました。さらに、マン・レイ、ロベルト・マッタなどの芸術家とともにアートとデザインを融合し、その時代の文化的および芸術的風景に大きく貢献するコラボレーションに取り組むなど、イタリア・モダンデザイン界を牽引するカリスマ的存在として知られました。

Dino Gavina, 1969
Dino Gavina, 1969
© image: Telimage, Paris
© man ray 2015 trust / adagp, Paris & jaspar, Tokyo, 2023 x0185

 BUNDLESTUDIO主宰の川合将人は、1990年代後半にアメリカのチャールズ&レイ・イームズ、フランスのジャン・プルーヴェやシャルロット・ペリアンの人気が高まるなかで、戦後イタリアのインテリア、家具、グラフィックデザイン、それらを生み出したデザイナーやメーカーの背景に興味をもちました。そのなかでディノ・ガヴィーナが関わった家具への驚きは強く、先述のマン・レイやマッタのほか、メレット・オッペンハイム、コンスタンティン・ブランクーシへのオマージュ作、ウルトラモービレ・コレクションに強く心を惹かれます。またガヴィーナの死後に行った取材によって、1957年のミラノトリエンナーレで出会った高濱和秀をトップデザイナーにしたこと、カスティリオーニ兄弟やカルロ・スカルパを起用したショールーム、カスティリオーニ兄弟がレディメイドの手法でデザインした製品はマルセル・デュシャン、マン・レイと親密な関係を築いたガヴィーナの存在なしには語れぬことなどを学び、あらためてその功績を日本でも紹介したいと長く企画を温めてきました。ディノ・ガヴィーナの人物像、その情熱と凄まじい直感力は、現代の我々の暮らしにまで届き、その意思はまだまだ拡散を続け受け継がれていくことと思います。

 本展は〈ガヴィーナ〉および〈シモン〉から発売された家具や照明などの貴重なヴィンテージ品、現在の製造販売権を有する〈カッシーナ〉〈フロス〉〈ノル〉〈ネモ〉〈パラディーゾテレストレ〉〈サンタ&コール〉等の現行品をコーディネートとともに展示販売します。また「空間主義(Spazialismo)」を提唱して20世紀の現代美術に大きな影響を与えたルーチョ・フォンタナの平面作品2点と立体作品2点を展示販売します。ガヴィーナは1950年代、友人であったフォンタナに連れられミラノ・トリエンナーレを訪問し、知己を広げたことでデザインの世界へ進んだことが知られています。

 当ギャラリーは、1950年代にル・コルビュジエのアトリエに勤めた日本人建築家の進来廉が帰国後の1974年に設計した個人邸を再生した空間です。この空間でディノ・ガヴィーナが誕生に深く関わった数々のプロダクトを展示し、彼の功績を俯瞰するとともに、その“先駆的な破壊”と“新たな領域”へと向かう情熱や人間味あふれる柔軟な思考が来場者の皆さまに新鮮な視点を提供する契機となれば幸いです。

On Exhibit

Furniture Illustrations A Furniture Illustrations B

ディノ・ガヴィーナとは誰だったのか?

Interview with Luca Fuso

カッシーナのなかに生きるガヴィーナ

 ディノ・ガヴィーナとチェーザレ・カッシーナ。イタリアデザインの礎を築いた2人の起業家は照明メーカー〈フロス〉を共同設立しただけでなく、なによりも深い友情で結ばれていた。ガヴィーナ没後に彼をめぐるデザイン史の記憶が薄れつつあった2013年、カッシーナは〈シモン〉コレクションの権利を取得した。背景にどのような物語があるのだろうか。2018年よりカッシーナの最高経営責任者(CEO)を務めるルカ・フーゾ氏に聞いた。

チェーザレ・カッシーナから見てガヴィーナはどのような人物だったのでしょう。チェーザレの娘、アデーレの近著『CRONACHE MINORI DALLA PERIFERIA DEL DESIGN(デザインの周辺の小さな記録)』(Corraini Edizioni 2022)によれば、チェーザレは、ディノがイタリアデザインの啓蒙的な起業家であり、若い才能をスカウトする天才だったことを高く評価していたと記しています。ディノはチェーザレにとって “精神的な父” であり、生来の直観力を伸ばす手助けをしてくれた大切な人物でした。

ガヴィーナとカッシーナの交友にまつわるエピソードをお聞かせください。1960年代初頭に2人は出会い、ディスカッションとアイデアの交換を重ね、友人関係へと発展します。2人の起業家はともに、デザインがモダンへと向かう重要な転機を起こしたのです。ガヴィーナを通じてチェーザレは、アフラ&トビア・スカルパ、マリオ・ベリーニ、ガエタノ・ペーシェら若い才能と知り合い、彼らがカッシーナ、そしてC&B(カッシーナ&ブスネリ・のちのB&Bイタリア)発展の基礎を築くのです。

2人が1962年に〈フロス〉を設立した背景についてお聞かせください。2人はデザインの行方について長いこと話し合い、戦略的計画を考えました。そしてこう仮定したのです。カッシーナは高品質のクッション張りの家具と椅子を、ガヴィーナは家具の製造を担う。さらに家庭の新しいインテリアを完全なものとするために、照明を工業的に製造する会社として〈フロス〉を設立したのです。

カッシーナが〈シモン〉製品の権利を2013年に獲得する、そのビジョンはどのようなものでしたか。この買収は、イタリアデザインを理解するうえで基礎となる2つのストーリーが合流したことを意味します。実験とイノベーションを怠らない姿勢、マテリアルと作業プロセスにおけるクオリティの保証、そして新しいデザイン言語の表現、文化的価値の啓蒙……2つの企業は共通の要素によって強く特徴づけられます。

ガヴィーナは1964年にル・コルビュジエ(とピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン)の家具の生産を打診され断わっています。その後、どのような経緯でカッシーナがその権利を得たのでしょうか。1962年にガヴィーナは自身の会社でマルセル・ブロイヤーの家具を製作することを決定し、アーカイブモデルの再編集を始めた最初の人物となりました。2年後に、ル・コルビュジエらの家具の権利を持つハイジ・ウェーバーがガヴィーナに会い、リ・エディションを提案しました。しかし彼はこの家具の作りは職人的すぎると考えて断り、チェーザレを紹介し〈カッシーナ〉が権利を取得しました。これらの作品が、フィリッポ・アリソンとともに70年代から展開する「イ・マエストリ」シリーズの基礎となったのです。

日本の〈カッシーナ〉のショールームには、ガヴィーナと深い絆で結ばれていた高濱和秀の家具がいくつも置かれていることをうれしく思います。TAKAHAMAがデザインした家具は、彼を形成した東洋の文化と、その後に深く関わった西洋の文化に属する記号が折り重なるなかに、厳格さ、エッセンシャルなフォルム、そして本質的な詩的言語が際立つ作品だと感じています。

Maria Simoncini, Cesare Cassina, Kazuhide Takahama, Castiglioni
Image courtesy of Cassina ixc.

Interview with Gherardo Tonelli

そして現代の 〈パラディーゾテレストレ〉

文明が始まって以来、人類は彼らの手が作り上げる人工物によって “彼の” 地上の楽園の建設に貢献してきた。人間の痕跡は、あらゆる地上の楽園を特徴づける — ディノ・ガヴィーナ

ディノ・ガヴィーナは1983年、最後の冒険となるブランド〈パラディーゾテレストレ(地上の楽園)〉を立ち上げ、複雑化、醜悪化する世界のなかの小さな楽園づくりへと踏み出す。ガヴィーナ亡きあと〈パラディーゾテレストレ〉を引き継ぎ、その遺志を再構築して現代につなぐ、もう一人の情熱あふれる起業家、ゲラルド・トネッリ氏に聞いた。

〈パラディーゾテレストレ〉を継承し、再スタートされた経緯をお聞かせください。私はガヴィーナ家と親交があり、あるディナーの席で娘のイルカ・アレッサンドラからブランドを引き継がないかと持ちかけられました。そして2017年にガヴィーナの冒険を象徴していたものを一部修正しながら、より現代的なブランドとして再スタートさせることを決心しました。〈パラディーゾテレストレ〉のようなブランドを買収することは、イタリアデザイン、そしてそれを超える歴史の流れのなかに身を投じるということですから、何より非物質的な責任を意味します。その文化的遺産は計り知れないほど重要です。

ブランドをどのように再構築されたのでしょうか。現在の〈パラディーゾテレストレ〉はガヴィーナの時代に成功を収めた作品を単に集めてカタログ化しているわけではなく、私個人のビジョンをもとにアートとの結びつきがより強いコレクションとなっています。ガヴィーナが、職人技術かそれ以上の美的・文化的価値を、工業生産が担えることを示そうとしたのだとすれば、新たな〈パラディーゾテレストレ〉は職人の仕事の卓越性に価値を置いて歩み続けており、かつてとは逆のベクトルに向かっているといえます。ブランドであるにとどまらず、ギャラリーであり、リサーチの場であり、アーティストやデザイナーたちが新たなプロジェクトを開発するためのプラットホームとなっています。

ガヴィーナの秀でた側面や人間的な魅力について教えてください。ガヴィーナは並外れた2つの資質を持っていました。ひとつは真の教養人であったこと。彼の知識は、視覚芸術から建築、デザイン、文学にいたるまで多岐にわたる分野に及んでいました。現代にとどまらず、美術史への深い情熱から古美術を蒐集し、同時代の知の巨人のもとにも通っていました。もうひとつ、彼は類まれなコミュニケーション能力を備えていたんです。相手の隠された能力を引き出す才能を持ち、先見の明で、誰に才能があって誰にないかを素早く理解することができました。

世界的なアーティスト、建築家、デザイナーと親密な関係を次々と築きましたね。人を説得する傑出した能力と活力溢れる性格を持ち合わせていましたからね。ガヴィーナは若くしてハイレベルな会社を立ち上げ、早々にイタリア家具業界の鍵を握る人物となりました。疲れ知らずで、強い情熱に突き動かされ、いつも気持ちを踊らせてプロジェクトに取り組んでいたのです。

トネッリさんが取り組む将来的なプロジェクトがあれば教えてください。イタリア中部のファエンツァ出身のアーティストでデザイナー、アウグスト・ベッティのコレクションとアーカイブの権利を得たことです。近い将来、この魅力的なデザイナーの人物像に迫る重要なイベントを開催する予定です。

日本のみなさんへメッセージをお願いします。あえて行動せよ。ガヴィーナは常に果敢に挑戦し、私たちも同じように行動するよう巻き込む天才でした。

Dino Gavina, Man Ray, Juliette Browner – Centre Duchamp Presentation
1969, S. Lazzaro (photo: F. De Col Tana) / Image courtesy of Cassina ixc.
Credits

BUNDLE ARTICLE No.003
Direction: Masato Kawai
Text: Kaoru Tashiro (Article, Interviews, Relationship Chart, Chronology)
Editing: Yoshinao Yamada
Design: Jacopo Drago

Cooperation:
Artek
Cassina ixc.
FLOS JAPAN
Fujitani Shouten
Gallery Cellar
Galerie Saint Guillaume
Knoll Japan
LYNN INKOOP
METROCS
POST
SOMEWHERE TOKYO
UNDERGROUND

発行
BUNDLE GALLERY
278-0037 千葉県野田市野田57
https://bundlestudio.jp

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